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『下山の思想』 五木寛之著 幻冬舎新書 ::: 2013.07.15 Monday

JUGEMテーマ:読書感想文

 世の中に登山を薦める本はあまた存在します。また、上昇志向というのか、登ることを薦める本はたくさん在ります。私がこの本を読み始めた頃、おりしも三浦雄一郎氏がエベレスト最高齢記録を樹立したニュースが流れており、ちょっとした明るいニュースとしてテレビでは比較的大きく取り上げられていました。人間何歳からでもやればできるものだと、何だか私も嬉しくなりました。しかしその次の日だったか、体調を崩して下山はヘリコプターを使ったというニュースも流れ、この『下山の思想』を読んでいた時だったので、どことなくこのニュースに違和感を感じずにはいられませんでした。

 本書は、「登り詰めた日本はこの先どこへ行くのだろう」という読者への問いかけが前半で、後半は、高齢者に入った著者自身の心境を綴ったエッセイと区分できます。

 前半の問いかけの部分では、頂点を極めてしまった日本が、いかに今後ソフトランディングをしていくか、どうやったらこの難局を乗り越えていけるのか、そういった著者なりの達観したものの見方を綴っています。これは日本という国だけではなく、一人一人のライフサイクルの中でも耳を傾けておく内容ではないかと思いました。

 後半は、正直まとまりがなく、まさにつれづれなるままに語ったようなもので、内容はそれほど濃いとは言えないようにも思います。そういう点でこの『本でもって』に取り上げるのはどうかなとは思いました。しかし、たぶん自分自身も著者と同じような年齢に向かっていった時に、同じような心境となり、ひょっとしたらこの本が、自分の心の中にある郷愁を助けてくれる一冊になるのかもしれないとも思いました。

 前半と後半では全く違う趣がある本です。これから青春を生き、上昇する年齢に入っていく方にとっては、あまり必要のない本だと思います。あまりに参考にしすぎると、若くして老成してしまいかねない、そんな本ではあります。しかし、「登山」ではなく「下山」に注目するというものは他にありませんので、これはこれで貴重ですし、さて、これからどうやって自分の人生の舵を切っていこうかと思い出した中高年以降の方には読んでみる価値があるかもしれません。


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『表参道のヤッコさん』 高橋靖子著 ::: 2013.01.21 Monday

評価:
高橋 靖子
アスペクト
¥ 1,470
(2006-02-17)

JUGEMテーマ:オススメの本

 私も表参道で仕事をはじめて早丸8年になろうとしています。この8年の間には、表参道ヒルズがオープンして一時的なバブルになったり、リーマンショックで空き地が駐車場になるなど、このあたり周辺の流れをつぶさに垣間見てきたように思います。また私自身、街を歩いていると患者さんに出くわしたりと、何となく自分もこの街の一員になってきたのかなと、よそよそしかったこの街に対しての感情も、開業してからの8年という月日の流れのなかで少しづつ親しみになってきたかなと感じます。

 本書はタイトル通り、この表参道という街を舞台にして活躍してきた女性のエッセイ集です。著者は、“スタイリスト”という仕事名ではじめて税務署に申請したという、スタイリストの元祖である高橋靖子さん。1970年代という、日本が一番勢いがあった高度経済成長時代、ファッション関連の仕事も急増していました。今でこそ表参道・原宿はファッションのメッカでありますが、1970年代のはじめはその前夜と言ったところ。その頃はフォトグラファー、デザイナー、ミュージシャンなど、若い才能がこぞってこの表参道・原宿という街に事務所を持ち、集い、夢を語り合いながらお互い刺激をしあって成長していたそうです。

 本書はその1970年代を多彩な才能とともに過ごした、多感な一人の女性から見たエッセイ集。表参道・原宿という街を中心にした回顧録。様々な才能と時代の勢いが重なる中で、スタイリストという新しい仕事を築き上げていく姿。上手に時代を泳ぐと言うよりは、時代の周りでわーきゃー言いながらも、時々切なくなるような、不器用なところも合わせ持った素直な等身大の自分とその時代の距離感。その微妙な距離感に触れると、今を生きている自分へも何かを思い出させてくれます。

 1970年代の青春を振り返る姿から、元気な頃の日本を知ることができ、読んでいる方も元気が出てきます。文章も軽快で、そしてどこかピュアな感じが伝わってきます。時代を感じるモノクロの写真と、2ページ読みきりのスピード感も素敵な一冊。



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