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『中国の科学文明』 藪内清著 岩波新書 ::: 2012.12.24 Monday

JUGEMテーマ:オススメの本

 かつて東京大学名誉教授である戸川芳朗先生の講義を受けていたとき、先生は講義の中で、よく「中国は早熟の国でありました」という表現を使っていました。中国の古代文明である黄河文明は、世界四大文明の一つでありますし、中国で三国時代が繰り広げられている頃、日本はまだ卑弥呼がいたのですから、その“早熟の国”という表現はぴったりだなと思いました。その後も日本は遣隋使、遣唐使を通じて中国の文明を輸入し、国家の発展の礎としてきた時期がありました。

 本書『中国の科学文明』(藪内清著・岩波新書)は、そんな早熟の国である中国の科学文明を、先史時代から民国初年までを順を追って概観してくものです。様々な分野に於いて早熟なところを見せてきた中国ですが、本書は特に科学文明に焦点を当てているために、テーマとしてとてもよく分かりやすいところがあります。中には、「黄帝内経と傷寒論」という項目もあり、東洋医学・鍼灸を専門とする者にとって、とても参考になる部分があったりするのが嬉しいです。

 “早熟の国”中国も、時代を経るごとにその輝きを失いつつある時期を迎えます。世界の情勢が西洋文明を中心に拡大していく中で、中国の学問は懐古的なものとなってどんどんと差を付けられていくことになります。東洋医学・鍼灸が実践的な経験の積み重ねによって発展し、普遍的な原理の探求にはあまり興味を示さなかったように、特に数学のように理論的な志向が必要とされるところから、少しずつほころびが出てきたようです。このような中国科学文明の衰退の記述は、ある意味今日への警鐘でもありますし、また、だからこそ古代から続く中国文明の早熟さを際立たせるものでもあります。

 本書は1970年発行ではありますが、現在も読み継がれる中国科学文明に関する入門書です。中国の歴史や、中国の科学文明に興味のある方は一度手に取ってみていただけたらと思います。



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